言葉の煙霞

言葉は、無限の可能性を秘めている。

2020年上半期に読んだ本

f:id:hinata_manabe:20200520123706j:plain

 

 

 6月も今日で終わるので、2020年、上半期で読んだ本を紹介したいと思う。

 去年までは『読書記録』なるものをつけていたのだけど、今年に入ってからはつけていなかったので、去年読んだものも含む。
 ハードカバーやら、単行本やら、小説・文庫から紹介していく。

 私の読む本のジャンルは結構、偏っている。人生にも遠心力がかかり、まるでどこかに吹き飛んでしまいそうな思考回路をしているので、ますます偏った人間になっていきそう。そのために、たまに純粋な理性を持った小説家様の物語を摂取しながら、均衡を保っている。

 まぁ、私なんかが読んだ本を読みたいと思う方はなかなかいないかもしれないが、私が描く物語の原料は、紹介する本の中から、味つけやら色どりやら、絞り出しながら紡いでいる。


 興味がある方は購入して、ご一読してみては、と思う。

 

 

1.この地獄を生きるのだ/小林エリコ

 のっけから、とんでもないタイトルの本を紹介するが、タイトルだけではなく、内容も重い。
 ブラック企業で働き、心を病んで自殺未遂、精神障害を患った女性の絶望と希望の記録。ノンフィクションだ。

 この本は、
「普通に働いて、普通に生きたかった。」
 という謳い文句を掲げていて、一度ドロップアップした人間が、いかにこの日本で再生することが困難か、それを綴ったものである。

 

 私は特に慈愛を持った人間ではなく(むしろドライ)、よく世間で騒がれている「弱者を救うこと」に対して、手を差し伸べたり、心を動かされて行動したいとも思わない。こう言ってしまうと、冷酷な人間だなと後ろ指を差されそうであるが、私は「平等」という言葉が嫌いである。強制的に練り上げられた平等に対して、そこから転落した人間を弱者と扱うならば、普通に生きることを諦めた人間は、平等すら掴めないと考えている。

 悪いのは「この世界だ」と強く思う人間であり、この世界は大嫌いなのだ。
 その想いはこの本を読んで更に強まった。

 

 この本は、作者が「うつ病を患い、精神病になった人間は生きるだけでもしんどい。そんな人間に手を差し伸べてね」という、そんな生易しいことを言いたいわけではない。

 日本が地獄かどうかではない。一度、落ちてしまった人間は、そんなことすら考える余裕すらないのだ。
 では、なぜ落ちてしまうのか。もちろん根本はブラック企業という悪魔の居城のような場所である。しかし、そこから転落したあとに救いの手を差し伸べるのが、「生活保護しかない」という厳しい現実が待っている。

 精神病、普通の人生を獲得することへの葛藤、底辺で這いずり回った女の人生がこれでもかというくらい突き刺さってくるお話。

 もちろん、こんなくそったれな世界にも救いはあるよ。その救いに気づくのは、やっぱり自分自身なのだ。そんなことを教えてくれる本。

 

 

2.教育格差/松岡亮二

 続いて紹介するのは、新書。

 この本は新書にしては分厚くて、読むのに時間がかかる。しかし、教育に関するデータ量は膨大である。

「日本の教育の実態を俯瞰的に捉え直した数少ない正攻法の力作」
 と謳っているように、データを活用して、現代における日本の教育の現状を見事にあぶりだしている。

「お金ある家庭が、小さい頃から子供に塾などの教育費をかけることができるから、ますます教育格差が広がっているんでしょう?」
 という単純な話ももちろんあるが、それだけではない。

 著者は情熱を持ってこの本を執筆しているだろう片鱗があちこちに垣間見える、単なる理想論にとどまっていない構成が共感を持てた。


 以下、気になった文章を引用させていただく。

 

『「平等」を重視した場合、教育に期待される機能は「平等化」である一方、「自由」を重視したならば、優秀さや効率が目標となり、その機能は「差異化」になる。』


 なんか共産主義と資本主義的な話を書いているが、今(と言うか、昔からか?)、日本の企業が目指しているのは間違いなく後者であろう。幻想にまみれた即戦力の話。
 日本の教育は「平等」こそが理念であったもののはずだが(それは既に崩れているのかもしれないが)、義務教育までものが「即戦力」を育てるものになってしまえば、この先の日本の未来は推して図るべし。

 

 なお、先ほどの本の紹介の中で、私は「平等」という言葉が嫌いと述べたが、教育に関しては平等で対等な知識を与えることが最重要事項であると考えている。人間にはもちろん差異があるので、できる人とできない人がいるのは必然だ。そのできない人へ柔らかいセーフティーネットを用意することが必要なだけ。平等から転がり落ちた人間を弱者と勝手に決めつけて、弱者の烙印を押すことがあなたたちの平等なのか、と言いたいだけ。


 ちなみに日本に数ある新書の中で、データを徹底的に活用して、俯瞰的・客観的に問題や課題をあぶり出す作者さんは結構稀なので、この方の著書は他にも読んでみたいと思えた。
 数多の新書は、私の中では「フィクション」なのだ。

 

 

3.トラペジウム/高山一実

 乃木坂46の高山一実さんが描いた小説。雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載されていたらしい。
 アイドルを目指したいと夢見る少女が、アイドルになるまでの軌跡を描いた物語。

 先に紹介した本が重い内容のものだったので、キラキラした青春小説を紹介する。

「アイドルになる!」という夢が物語の最終目標であり、話的には単純なものであるが、そこへたどり着くまで様々な困難にぶつかる。それと闘いながら葛藤する女子高生の心理描写を、緻密かつ鮮明に描いていたと思う。
 主人公の東(あずま)ゆうは、どちらかというとドライな性格をしているが、その性格があるからこそ、悩みや不安、友人との対立にいざぶつかった時に映えるものがある。

 

 高校生って、キラッキラしている。夢を叶えることは素敵だね、ってことをこれでもかってくらい伝えてくれる。

 

 私のひねくれた考えを洗い流してくれる、そんな作品。ラストは必見。涙もの。トラペジウムの意味を知らない人は、知らないまま読み進めることをお勧めする。

 

 アイドルが描いた小説と侮るなかれ。私が紹介するのは文庫版であるが、あとがきもまた秀逸だった。(ハードカバーの方にもあるかどうかはわからない)
アイドルだって、一人の人間なんだよ。

 

 どちらかと言うと、アマゾンのレビューにもあるとおり、文章が比較的ライトノベル寄りなのかもしれないので(私はそこまで思わなかったが)、純文学のような小説を期待した人は肩透かしを食らうかもしれない。
 高校生の頃の情熱や夢を再び取り戻したいと願っている大人や、同世代の若者には響く物語だ。

 

 

 

**********
 以上、三冊。
 書いてみてわかったけど、本をレビューするって、しんどい。
 本当は5冊ほど紹介したかったけど、ここでギブアップ。

 もっとおもしろおかしくレビューしたいのに。おのれ、時間よ。おのれ、自分の文章力の無さよ。

 

 ここではいつか、誰かがネットで書いている小説(なろうとか、いろいろ)もレビューしたいと考えている。