あとがき
重大なネタバレを書いていますので、絶対に最後にお読み下さい。
あとがきですからね。最初に読む人はあまりいないかもしれませんが。
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自由と過去をテーマに、物語を紡いでみました。
タイトルの「猫は朝霧に燃ゆ」。
この猫と言うのは、心晴であり、夏雄であり、秋であり、冬田玲子でもあります。それぞれはそれぞれの自由を主張します。それぞれ、忘れてしまった、忘れられない過去もあります。過去を美化しながらも、前ヘ進みます。
そのことを意識して、この物語を書き進めてきました。
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「変わりたくないことを共有したかった。あいつは羨ましいと思うことで、自分は人と同じ道しか歩めないことを自覚したかったのだ」
「過去は変わらないから、いくらでも美化できる。美化したものは大切にしなくてはならない。でも、それを守るためになぜ行動するのか? ハルとナツの再会が過去のものではないと、これから未来に向かって二人で歩いていいきたいことの示唆」
「過去を美化するのではなく、今の自分を成長させなければならない。誰かとつながらなくてはならない。そのために何が出来るか。模索するための物語」
夢を見つけられない少年。
夢を持つ少年。
夢を見たくない少女。
夢を諦めた女性。
四人の想いは小さな島で交錯し、それぞれの過去を見つめ直す。
楽しさを共有したかった。
この世界の不満を共有してほしかった。
この世界に、未来を、将来を見出した時、ナツとハルが選ぶ答えは。
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この物語を書くにあたって、頭の片隅の置いていた骨子です。
読者の皆様が受け取るイメージはそれぞれだと思いますので、この視点は参考までに捉えてください。
芸術は過去にできたもの。それは変わらない。
そこから感じるものは、人それぞれ。美化するのも、人それぞれ。
お気づきのとおり、核となるキャラクターには季節を入れ込んでいます。冬田玲子だけがなぜ苗字なのかは、既に夢を見つけていたから、それを捨てたからです。そういう設定もさりげなく考えてありますと言う、単なる自己満足です。
登場人物の対比を込めて、芸術の島、直島を舞台にしようと決めました。
この話に出てくる曲島は架空の島ですが、直島は実在する島です。一生に一度は、訪れることをオススメします。
この作品は『映像化する』ということを頭に意識して描いていました。
そのことを意識すると、離島、芸術、海、ボーイミーツガール、そして、最後の厳島神社のシーン(ハルが思いの丈を告白するところ)が頭の中に浮かびました。
そこからキャラと物語の骨子をプロットして、この物語が出来上がりました。
親友のアキが動画を削除して、その後、主人子のナツが玲子を説得するシーン。あれは物語を書き初めてから(このサイトへ投稿してから)考えたところです。
個人的にはあそこが最大の見せ場になってしまったかなと思っていて、最後のハルとナツのシーンが霞んでしまうのではないか。そう思っていたので、最後をうまく見せることが課題でした。
どっちが心に響いたシーンなのかは、読者の皆様次第ですが。
蓋を開けてみると、十五万文字を越える作品になってしまいました。自分でも驚きです。
最終的には、一ノ瀬心晴の成長物語みたいな感じになってしまいました。それは意図的にしたつもりです。実際、仙田夏雄はそんなに成長していない、はず……。してるか。
ちなみに、ラインやユーチューブ、広島の厳島神社を出したのは、現実性を高めるためです。逆に、曲島を架空の島にしたのは、あなたの中にある夢や希望は、これから現実になるものだから、あえてぼかしたものにしました。(直島をそこまでリアルに描ききれない、という作者都合もありますが)
現実の世界にも、異世界はあるんだよ!
ナツの父の言葉にもありますが、人は、やっぱり、誰かのために動くことが原動力だと思うんですよ。
最近流行ってる鬼滅の刃の台詞にもありますが、「人は、心が原動力だから、どこまでも強くなれる」
わたしが描く小説のコンセプトは、若者の成長です。
この物語を読んで、自分はちっぽけだ、世界に置いていかれているとか思わずに、しっかりと世界と向き合い、正しい情報を得て、自分自信を成長させてほしいと願っています。
綺麗事と思えるかもしれませんが、今の日本に必要なのは、まさに自己投資だと、わたしは考えています。
自己啓発本を否定するわけではありませんが、きれいな言葉が並べられただけでは、心に響いても、自分でなにも考えないです。
経験して、自分の頭で考えて、知識、知恵となり、人は成長するのです。
わたしはその知恵を出し惜しみせず、皆さんにこれからも伝えていく所存です。
これから未来を作る若者のために、わたしはこれからも物語を通じてメッセージを送り続けます。
既存の価値観を壊すことが出来るか。それによって、新たな価値観を植え付けることが出来るか。
これからの世の中は、この言葉に尽きるのです。
令和2年6月8日。真辺陽太。