言葉の煙霞

言葉は、無限の可能性を秘めている。

砂にまみれた砂を呑む

砂にまみれた女の23年間の軌跡。 意外に長い短編小説。 果たして短編小説と呼べるのか。 思いつくままにつらつらと書き上げただけの物語。 R15です。

☆011.新型コロナ収束後の家庭は嵐である

我が家の朝は、戦場である。 ご飯食べた? 歯磨きは? 顔洗った? ハンカチとティッシュ持った? マスクつけて! 体温も測ってね! 高梨真一(たかなししんいち)はキッチンで朝食の洗い物をしながら、妻・結子(ゆうこ)が発する怒涛の言葉を聞いていた。 「カ…

★011.新型コロナ終息後の夜明け空に思う彼是

布マスクをしながら地下鉄に乗り込むと、座るところがなかった。小早川(こばやかわ)紗希(さき)は、ため息をマスクの中に吐き出し、人々の視線に背を向けた。電車の扉の前に立ちながら、少し伸びた前髪を指先で引っ張り、かき分ける。そろそろ髪を染めたいと…

月を見たい彼女は、ウサギのお面を被る。

ちょっとした短編小説です。8,000文字くらいです。 現実に疲れたあなたへ、ちょっぴり非現実で、オレンジジュースを飲み干したくなるような、そんなお話。 通勤、通学、お昼休みに是非。 あなたの世界が、素敵でありますように。 こんなにも、世界は美…

時雨

秋の末から冬の初めにかけて、ぱらぱらと通り雨のように降る雨。

【お題:あなたの人生を変えた小説はなんですか?】

【目的:執筆している作者様または読者様と価値観を共有したい!】 こんにちは。真辺陽太と申します。男性です。しがない会社員をやってます。年齢は秘密です。 ここでは物語の中では語れない、なんやかんやを語りたいと思います。 私が物語を描きたいと思っ…

翡翠色(ひすいいろ)のビー玉

あなたは世の中の理不尽を許せますか? 七、八年前に書いたであろう短編です。改めて読み返してみましたが、これ、そのままアップできるんじゃない? と思って、特に推敲せずアップしてみました。つながりが変なところは、ご容赦。 これを読んで、やっぱり自…

ナナカマドのイタズラ・解説編

ここからはネタバレです。 先に本編を読んでから、お読みください。

ナナカマドのイタズラ

全8,000文字程度の、短編小説です。 つまらない毎日に、ちょっとした刺激を与えるような、そんなお話です。

海猫は東雲色(しののめいろ)に舞う

全12,000文字程度の短編小説です。 会社に不満を持ちつつも、どうしようか悩み、それでも前に進むしかない若者へ捧げる物語です。 お時間があるときに、是非。

☆010.庶民は盛ってる暇なんて無い!

「高梨さんには、この仕事を担当してもらいますから」 出向先の上司である中西部長が書類をテーブルの上に置きながら、高梨真一に説明する。 真一はこの4月から、これまで勤めていた中堅ハウスメーカーを離れた。都市計画に関する仕事を行う財団法人へ出向…

★010.御社の強みは納期を守ることでしょ?

脇の下でピピと電子音が鳴る。 体温計を取り出す。36.6度。平熱だ。 1日でなんとか熱が下がったことに安堵した小早川(こばやかわ)紗希(さき)は、テレビのニュースを見ながら、朝食のパンを頬張った。マーマレードジャムの酸味が口いっぱいに広がる。 ニ…

☆009.「夢を託す」ではなく、「夢を選ぶ機会を与える」こと

「うわ。すご」 高梨真一はパソコンの画面を見ながら、感嘆の声を上げた。 某ゲーム会社の採用サイトだった。ゲームを作ることだけではなく、それに関わる仕事の数々が、社員の目線から事細かに紹介されていた。 ゲーム機の基板設計はもちろん、ゲーム内に出…

★009.風邪をひいても社内会議には出ろ

頭が痛い。二日酔いか。 目が覚めた瞬間、小早川紗希(こばやかわ・さき)は思った。枕に顔を埋めたまま、なかなか起き上がらずにいると、身体が布団の中でぶるりと震えた。 違う。これは……。 紗希は毛布に包まったまま、机の引き出しから体温計を取り出し、…

☆008.「社会は厳しいものである」とは、誰が決めたのか。

4月に入ると、すっかり日が長くなった。 高梨真一は会社の帰り道、スーパーへ行くと、つい時間が経つのも忘れて書籍コーナーを彷徨っていた。気づけば、19時を回っていた。慌てて、妻の結子に頼まれた牛乳とパンをカゴに入れていると、 「あ、太陽君のパ…

★008.正社員の立つ場所は。

ここは牢獄か。 紗希がようやく口をつけたグラスのビールは、少しぬるくなっていた。泡と苦みが、ついつい毒を転がしてしまった舌の上にいつまでも残り、紗希は顔をしかめた。 紗希が連れて来られたのは、賑やかな洋風居酒屋だった。 同期会には、主催者であ…

☆007.氷河期世代とか、少母化とか、独身税とか

「なぁ、お前、結婚しねーの?」 金曜日、やや混雑した帰りの電車の中。吊革に掴まって今日のニュースをスマホで読んでいると、高梨真一の耳にそんな声が届いた。視線だけちらりと横に向けると、30代後半だろうか、真一のすぐ傍の座席に2人のサラリーマン…

★007.同一労働同一賃金

会社の一員になることで、この世の中はようやく、一人の人間を社会人として認める。 雪がすっかりとけ、袖を通すコートが薄くなり始めた頃、令和2年4月になった。小早川紗希の、派遣職員として、二年目の春がやってきた。 この春から、ついに同一労働同一…

☆006.Work Life Things~仕事と生活の彼是(あれこれ)~

「太陽は今日、図書館で絵本を借りるー」 課長に嫌味を言われながらも午前中の休日出勤を終えた真一は、家の玄関に足を踏み入れた瞬間、息子の太陽にせがまれた。太陽は図書館で絵本を借りることが大好きだ。自分で読みたい絵本を選び、まだ拙い口調だけど、…

★006.失われた30年

午前10時。洗濯機を回していると、突然、玄関のインターホンが鳴り響いた。 「お母さん。どうしたの?」紗希が玄関の扉を開けると、母がパンパンになった手提げ袋を抱えていた。 「野菜。持ってきてあげたよ」 「重かったでしょう」 紗希は母から手提げ袋…

☆005.休日出勤の違和感

カードリーダーを通し、会社のビルに入ると守衛がお疲れ様ですと微笑みかけてくる。 「休日出勤かい? ご苦労様だねぇ」 高梨真一は無言のまま、苦笑した。今日は祝日の月曜日。三連休の最終日だった。 エレベーターに乗り、真一は職場である5階へ向かう。…

★005.ドロップアウトの先

真面目に、愚直に生きることは、とても辛い。 東京の大学院を辞め、地元の北海道に戻った紗希は、実家で療養していた。軽いうつ病と診断されたので、気持ちを落ち着けるまで1年ほどかかった。 ようやく札幌で就職先を探せるようになった頃には、実家に戻っ…

☆004.人手不足の空白

雪が幾重にも積み重なった公園の雪山で、陽乃(はるの)と太陽はそり遊びをしている。六歳と三歳になると、二人は子供たちだけの世界の中で遊んでくれる。 真一は手持ち無沙汰になるが、体を動かしていないので、一人、寒さと格闘しなければならない。氷点下の…

★004.日本の働き方の違和感

人は、努力と忍耐と根性があれば成長できて、いかなる困難に対しても立ち向かえるようになる。 紗希は大学院へ進学した時、教授にこう言い聞かされた。 「これからの日本は、結果がすべてになる。年功序列の時代は終わった。結果を出すためには、自分の限界…

☆003.育児休業の違和感

長女の陽乃(はるの)が産声を上げたのは、雪の降りしきる12月のとある日だった。 深夜0時くらいに陣痛が始まったが、初産だったので、結子は6時間もの間、その痛みと戦っていた。テニスボールを結子の背中のどこに当てていいのか、水はいつ結子の口に含ま…

★003.労働の空白

少し熱いくらいの湯に浸かり、ルームウェアに着替えると、心がほっとして、落ち着いた。 紗希は部屋のソファに座り、濡れた髪の毛をバスタオルで丁寧に拭いていた。 ……さっきは、高梨さんにきつく言い過ぎたかな。突然、帰っちゃったし。休み明けにちゃんと…

☆002.夫が育児に参加すること。②

鍋の中に、昆布が浮いている。コンロは弱火だ。小さな泡がふつふつと沸いてきたところで、真一は昆布を鍋からすくい上げる。 上品な香りがキッチンに漂う。真一は大きく息を吸い込み、そして吐き出した。 みりんや料理酒、醤油で味付けをする。これでつゆは…

★002.なぜ残業が多いのか。②

「俺、出向を命じられたんだよね」 電子レンジで温めすぎて萎びた枝豆を指でつつきながら、高梨が他人事のように言った。 「え。どこにですか? まさか、北海道外? 単身赴任?」 紗希が心配そうに尋ねた。高梨は結婚していて、子供もいたはずだ。 「幸い、…

☆001.夫が育児に参加すること。

男性の育児休業が、巷で盛んになっている。 ヤフーニュースを見ながら、高梨真一は思った。 コメントを見ると、「付け焼刃で休んでも意味がない。目の前の仕事はいいのか」「男性が育児休業を取ることで、少子化の解決になる」という意見で、真っ二つに別れ…

★001.なぜ残業が多いのか。

やってしまった! 自分の頭を掴み上げて雪の中へ放り投げてしまいたいほど、小早川紗希(こばやかわ・さき)は自責の念に駆られた。 家の鍵を、会社に忘れた。 親友の山口香(やまぐち・かおり)と、街へ飲みに出掛けたのはよかった。でも、約束の時間に間に合う…