言葉の煙霞

言葉は、無限の可能性を秘めている。

Work Life Things ~side Life

☆012.独身のままでもいいじゃない!

「知ってるか? 子供を三人産んだら、月に六万円もらえるかもしれないぞ」 金曜日、やや混雑した電車の中。つり革に掴まらず、扉に寄りかかっていてスマホで今日のニュースを読んでいると、高梨真一の耳にそんな声が届いた。視線だけちらりと横に向けると、…

☆011.新型コロナ収束後の家庭は嵐である

我が家の朝は、戦場である。 ご飯食べた? 歯磨きは? 顔洗った? ハンカチとティッシュ持った? マスクつけて! 体温も測ってね! 高梨真一(たかなししんいち)はキッチンで朝食の洗い物をしながら、妻・結子(ゆうこ)が発する怒涛の言葉を聞いていた。 「カ…

☆010.庶民は盛ってる暇なんて無い!

「高梨さんには、この仕事を担当してもらいますから」 出向先の上司である中西部長が書類をテーブルの上に置きながら、高梨真一に説明する。 真一はこの4月から、これまで勤めていた中堅ハウスメーカーを離れた。都市計画に関する仕事を行う財団法人へ出向…

☆009.「夢を託す」ではなく、「夢を選ぶ機会を与える」こと

「うわ。すご」 高梨真一はパソコンの画面を見ながら、感嘆の声を上げた。 某ゲーム会社の採用サイトだった。ゲームを作ることだけではなく、それに関わる仕事の数々が、社員の目線から事細かに紹介されていた。 ゲーム機の基板設計はもちろん、ゲーム内に出…

☆008.「社会は厳しいものである」とは、誰が決めたのか。

4月に入ると、すっかり日が長くなった。 高梨真一は会社の帰り道、スーパーへ行くと、つい時間が経つのも忘れて書籍コーナーを彷徨っていた。気づけば、19時を回っていた。慌てて、妻の結子に頼まれた牛乳とパンをカゴに入れていると、 「あ、太陽君のパ…

☆007.氷河期世代とか、少母化とか、独身税とか

「なぁ、お前、結婚しねーの?」 金曜日、やや混雑した帰りの電車の中。吊革に掴まって今日のニュースをスマホで読んでいると、高梨真一の耳にそんな声が届いた。視線だけちらりと横に向けると、30代後半だろうか、真一のすぐ傍の座席に2人のサラリーマン…

☆006.Work Life Things~仕事と生活の彼是(あれこれ)~

「太陽は今日、図書館で絵本を借りるー」 課長に嫌味を言われながらも午前中の休日出勤を終えた真一は、家の玄関に足を踏み入れた瞬間、息子の太陽にせがまれた。太陽は図書館で絵本を借りることが大好きだ。自分で読みたい絵本を選び、まだ拙い口調だけど、…

☆005.休日出勤の違和感

カードリーダーを通し、会社のビルに入ると守衛がお疲れ様ですと微笑みかけてくる。 「休日出勤かい? ご苦労様だねぇ」 高梨真一は無言のまま、苦笑した。今日は祝日の月曜日。三連休の最終日だった。 エレベーターに乗り、真一は職場である5階へ向かう。…

☆004.人手不足の空白

雪が幾重にも積み重なった公園の雪山で、陽乃(はるの)と太陽はそり遊びをしている。六歳と三歳になると、二人は子供たちだけの世界の中で遊んでくれる。 真一は手持ち無沙汰になるが、体を動かしていないので、一人、寒さと格闘しなければならない。氷点下の…

☆003.育児休業の違和感

長女の陽乃(はるの)が産声を上げたのは、雪の降りしきる12月のとある日だった。 深夜0時くらいに陣痛が始まったが、初産だったので、結子は6時間もの間、その痛みと戦っていた。テニスボールを結子の背中のどこに当てていいのか、水はいつ結子の口に含ま…

☆002.夫が育児に参加すること。②

鍋の中に、昆布が浮いている。コンロは弱火だ。小さな泡がふつふつと沸いてきたところで、真一は昆布を鍋からすくい上げる。 上品な香りがキッチンに漂う。真一は大きく息を吸い込み、そして吐き出した。 みりんや料理酒、醤油で味付けをする。これでつゆは…

☆001.夫が育児に参加すること。

男性の育児休業が、巷で盛んになっている。 ヤフーニュースを見ながら、高梨真一は思った。 コメントを見ると、「付け焼刃で休んでも意味がない。目の前の仕事はいいのか」「男性が育児休業を取ることで、少子化の解決になる」という意見で、真っ二つに別れ…