言葉の煙霞

言葉は、無限の可能性を秘めている。

猫は朝霧に燃ゆ

猫は朝霧に燃ゆ【1.少女と猫④】

1.少女と猫④ 湿気を含んだ風が首を撫でつけて、汗ばんだ背中へ流れていく。シャツの袖が旗のようになびいている。 ナツはスマホで検索した島の地図を見つめていた。顔を上げると、島の輪郭がぼんやりと、霧色の空を映した海の上に浮かんでいるのが見えた。…

猫は朝霧に燃ゆ【1.少女と猫③】

1.少女と猫③ 「夏雄、入るぞ」父が仕事から帰ってきて、部屋にやって来た。いつもノックと同時に扉を開けるから、ノックの意味がまるでない。 「なに?」 いつものようにベッドに横たわり、スマホを触りながらナツは返事をした。アキと学校祭の動画につい…

猫は朝霧に燃ゆ【1.少女と猫②】

1.少女と猫② 「……ツ。おい、聞いてんのか? ナツ」 右手のスマホ画面を睨んでいると、アキに肩を小突かれた。 「え?」 ナツは顔を上げた。深緑に覆われた木々の隙間から、太陽の日差しが直接、目に突き刺さる。ナツは思わず手をかざした。 途端に、学校の…

猫は朝霧に燃ゆ

猫は朝霧に燃ゆ 仙田夏雄(せんだなつお)は高校三年生の夏にして、ようやくスマートホンを手に入れた。LINEやYouTubeをインストールする中、ふと自分の将来のことを考える。 「これから先のことを深く考えるほど、自分は長く生きていない。かと言って、楽観視…

猫は朝霧に燃ゆ【1.少女と猫①】

1.少女と猫① 将来について楽観的な答えを見つけると、人は満足してしまう。 仙田夏雄(せんだなつお)、とスマホに自分の名前を入力したところで、なんとなくナツは思った。 これから先のことを深く考えるほど、自分は長く生きていない。かと言って、楽観視…